伊坂幸太郎「逆ソクラテス」のあらすじと感想を紹介!

本紹介

『逆ソクラテス』はこんな人にオススメ!

・伊坂幸太郎の作品に初めて挑戦したい!

・後味がスッキリした作品を読みたい!

・一歩を踏み出す勇気が欲しい!

『逆ソクラテス』はどんな小説?

作者:伊坂幸太郎

出版社:集英社

刊行日:2023年6月25日

ページ数:329ページ

「先入観」に立ち向かう、平凡な小学生たちの逆転劇!

本作の主な登場人物は、小学校高学年の少年少女たち。

平凡な彼らが、知恵を振り絞り、世の中の「イメージ」や「先入観」に対して挑む逆転ストーリです!

小学校高学年といえば、大人の常識をつかみ始める時期。

しかし、まだまだ、子どもの純真さを持ち続けている時期でもあります。

大人になり切れず、曖昧に揺れ動く。それでも着実に成長していく主人公たち

『逆ソクラテス』は、そんな彼らが、世界をひっくり返す作品です。

あらすじ

「敵は、先入観だよ」学力も運動もそこそこの小学6年生の僕は、転校生の安斎から、突然ある作戦を持ちかけられる。カンニングから始まったその計画は、クラスメイトや担任の先生を巻き込んで、予想外の結末を迎える。はたして逆転劇なるか!?表題作ほか、「スロウではない」「非オプティマス」など、世界をひっくり返す無上の全5編を収録。最高の読後感を約束する、第33回柴田錬三郎賞受賞作。

集英社文庫裏表紙より引用

本作は表題作である「逆ソクラテス」のほか、

「スロウではない」

「非オプティマス」

「アンスポーツマンライク」

「逆ワシントン」

以上全5作が収録された短編集となっています。

今回は「逆ソクラテス」のあらすじについて詳しく解説していきます。

「逆ソクラテス」あらすじ

主な登場人物

・僕(加賀)
・安斎
・草壁
・佐久間
・久留米
・土田

小学生VS担任!先生の先入観をぶっ壊せ!

僕のクラスの担任の久留米は、「草壁なんて大したことない」と、ラベルを貼っています。

草壁に対して見下すような態度を取り、それを他の人にも押し付けようとします。

クラスのみんなも先生の考えに影響を受け、

「草壁のことは少々、蔑ろにしても問題ない」と見下していました。

久留米の考えを崩したい。
子どもに対して先入観を持つことに、慎重にさせたい。

「敵は、先入観だよ」

そうやって立ち上がったのは転校生である、安斎でした。

自分の考えは正しいと信じて疑わない久留米。

「自分は何も知らないということを知っている」ソクラテスと比べると、

先生は、いわば、「逆ソクラテス」。

安斎に率いられた僕たちは、「逆ソクラテス」に立ち向かうべく、様々な作戦で世界を巻き込み始める!

『逆ソクラテス』の見どころ

これからの人生に活きてくる、「僕はそうは思わない」という言葉

「だろ。でも、そんなの久留米先生の感想に過ぎないんだ」安斎は目を光らせ、例の台詞、「僕はそうは思わない」について、そこでもまた演説をぶった。

集英社文庫より引用

ストーリー内で安斎は、加賀や草壁に対して、「僕はそうは思わない」という台詞の重要性について説明しています。

自分の好きなことを見下されたり、考えを否定されたときには、「僕はそうは思わない」と口に出す。

もし言葉にできなくても心でそう念じることが大切なのだと言うのです。

安斎の言葉は、子どもはもちろん、大人になっても活かせる言葉ではないでしょうか。

大人になるにつれて、周りに合わせて、自分を押し殺す機会が自然と増えていきますよね。

そんな日々の中、誰かのイメージや先入観で、自分の大事なものを否定されたとき。

たとえ、その場で言い返すことができなくても、心の中で「僕はそうは思わない」と念じておくこと。

自分がどう思うのか、どう感じるのか、それは誰にも奪われはしないのだ、と心に留めておくこと

それはとても大事なのだなと、改めて実感しました。

何か特別感があるわけではない、メッセージ。

押しつけがましくない安斎の言葉は、読者に後味の良さを感じさせてくれます!

現実とのバランスが絶妙!「本当にありそうな話」

伊坂幸太郎の作品といえば、「ありそうで、ありえない話」が多いことで有名だと思います。

しかし、本作は現実と創作とのバランスが絶妙

「こんな感じの転校生いたよなぁ」

「小学生の頃、こういうことしたいと思っていたなぁ」

なんて、きっとあなたも懐かしい気持ちになるのではないでしょうか。

「あのとき、こうしていれば」そんな後悔を打破してくれる主人公たち

『逆ソクラテス』に収録されているタイトルに注目してみると、

ソクラテス

・スロウではない

オプティマス

アンスポーツマンライク

ワシントン

すべて「否定」の意味合いを持つ単語が含まれています。

しかし、物語の中で子どもたちは知恵を振り絞って、「否定」を「肯定」へと変換していきます。

世の中のちょっと嫌な人や、ちょっと間違っていることに対して、果敢に立ち向かっていく子どもたち。

そんな彼らの姿は、現実を生きる私たちを救ってくれるのではないでしょうか。

誰にでも、「あのとき、こうしていれば」なんて後悔はあるはず。

どうしてもあのとき一歩踏み出せなかった、言えなかった、行動できなかったこと。

そんな後悔を彼らが代わりに吹き飛ばしてくれるような読了感は、本作の魅力です。

『逆ソクラテス』まとめ

ここまで『逆ソクラテス』について解説してきましたが、いかがでしたか?

子どもと大人との間で揺れ動きながらも、世界を覆していく彼らの姿は、

きっとあなたにも一歩を踏み出す勇気を与えてくれるのではないでしょうか。

ぜひ、『逆ソクラテス』を読んでみてくださいね!

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